不妊治療の保険適用の条件と自己負担
保険適用の対象の治療
保険適用の対象の治療は、一般不妊治療(タイミング法・人工授精)と、生殖補助医療(採卵・採精から胚移植までの体外受精・顕微授精)です。男性の不妊治療では、精巣内精子採取術(精巣から精子を採取する手術)などの手術も保険の対象です。
保険診療を行っていない医療機関もあるため、治療を始める前に、受診する医療機関が保険診療を行っているかを確認しましょう。治療を始めるときは、医師から治療の内容と流れの説明を受け、治療を受ける人とパートナーが同意書などを提出します。
保険適用の対象の夫婦には、法律上の夫婦だけでなく、事実婚の夫婦も含まれます。
保険適用の年齢と回数の条件
体外受精・顕微授精が保険の対象になる条件は、治療を始める日の女性の年齢が43歳未満であることです。胚移植(受精した卵を子宮に戻すこと)の回数は、初めての胚移植の治療計画を作成した日の女性の年齢で、次の回数までです。
| 治療計画を作成した日の女性の年齢 | 胚移植の回数の上限 |
|---|---|
| 40歳未満 | 1子ごとに通算6回まで |
| 40歳以上43歳未満 | 1子ごとに通算3回まで |
| 43歳以上 | 保険の対象外 |
出産した場合と妊娠12週以降に死産した場合は、次の子どものための治療を始める日の年齢に応じて、さらに6回(40歳未満)か3回(40歳以上43歳未満)まで保険の対象になります。一方、タイミング法と人工授精には、年齢と回数の条件はありません。
不妊治療の自己負担
保険が適用される不妊治療の自己負担は、医療費の原則3割です。1か月(1日から月末まで)に医療機関の窓口で払った額が、年齢と所得で決まる上限額を超えた場合は、超えた額が高額療養費として加入している健康保険から支給されます。
70歳未満の人の高額療養費の上限額
2026年8月から2027年7月までの上限額は、次のとおりです。また、2026年8月からは、月ごとの上限に加えて、8月から翌年7月までの1年間の自己負担の上限(年単位の上限額)ができました。
| 年収の目安 | 1か月の上限額 | 年単位の上限額 |
|---|---|---|
| 約1,160万円〜 | 27万300円+(医療費−90万1,000円)×1% | 168万円 |
| 約770万〜約1,160万円 | 17万9,100円+(医療費−59万7,000円)×1% | 111万円 |
| 約370万〜約770万円 | 8万5,800円+(医療費−28万6,000円)×1% | 53万円 |
| 〜約370万円 | 6万1,500円 | 53万円 |
| 住民税非課税 | 3万6,900円 | 29万円 |
たとえば、年収が約370万〜約770万円の人が、1か月に医療費60万円(窓口で払う3割は18万円)の治療を受けた場合、上限額は8万5,800円+(60万円−28万6,000円)×1%で、8万8,940円です。そのため、18万円との差の9万1,060円が高額療養費として支給されます。
高額療養費は、勤め先の健康保険に加入している人は勤め先か健康保険に、国民健康保険に加入している人は住んでいる市区町村に申請します。
先進医療の費用
先進医療(保険の対象にするかを国が評価している医療)の費用は、全額が自己負担です。不妊治療では、タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養、子宮内膜受容能検査、着床前胚異数性検査(PGT-A)などが先進医療に告示され、保険が適用される治療と組み合わせて受けられます。
先進医療と組み合わせた場合も、診察・検査・投薬など通常の治療と共通する部分は保険の対象で、高額療養費も使えます。また、先進医療の費用は、都道府県・市が助成している地域があります。
不妊治療の費用の医療費控除
不妊治療の費用は、医療費控除の対象です。医師の診療の対価として払った不妊症の治療費と人工授精の費用は、保険が適用されない治療の費用も含めて対象になります。
ただし、自治体から受け取った不妊治療の費用の助成金は、払った医療費から差し引いて医療費控除の額を計算します。
出典
- こども家庭庁「保険適用について(不妊のこと DICTIONARY)」
- こども家庭庁「保険診療の基礎知識」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 厚生労働省「患者負担割合及び高額療養費自己負担限度額(令和8年8月〜令和9年7月)」(高額療養費制度に関する参考資料)
- 厚生労働省「先進医療の概要について」
- 国税庁「不妊症の治療費・人工授精の費用」
- 国税庁「地方公共団体が支給する少子化対策のための助成金等の所得税法上の取扱い」